言語や人種、文化の多様性があり、メディア環境もいち早く変化する米国では、2023 年にどんな記事が注目を集めたのでしょうか。
2023 年に US 版 Think with Google で読者のエンゲージメント率が高かった記事 5 本の概要を日本語で紹介します(*1)。
米広告代理店の経営幹部が指摘する YouTube 戦略
英語版の元記事:Which YouTube strategies work best? Three agency leaders share insights
著者:ブライアン・アルバート(Managing Director, YouTube Ads at Google)
電通グループの広告代理店である米 Carat の経営幹部が、YouTube を通じて視聴者との結びつきを強め、マーケティング効果を最大化するための戦略を示しました。
Carat North America のマイク・ロー CEO は「クリエイター主導のコンテンツ」が企業の成長にとって���要��������しま��。
2023 年 3 月の米国での調査によると、Z 世代の YouTube ユーザーの 68% が「YouTube をリピートする理由はクリエイターだ」と回答しています(*2)。 Z 世代の視聴者たちは、クリエイターを通じて YouTube に対する高いエンゲージメントがあるということです。
「YouTube は生活者の行動や嗜好、トレンドを理解するための強力な機会を提供しています。そこで得られるユーザーインサイトは、カスタマージャーニーのあらゆる段階での施策を最適化するのに役立ちます。クリエイター主導のコンテンツを通じて、視聴者との強いつながりをもち、購買行動やブランドの持続的な成長につなげられるのです」(ロー)
また Carat U.S. のジョアンナ・ホークス(EVP, Strategy)は、YouTube を「単なるエンターテインメントではなく、世界の見方や重要な問題に対する考え方を広げるもの」だと言います。コネクテッドテレビが生活に浸透し、SNS の将来が予測しにくいものに���るなど、メディア環境が変わる中での YouTube の役割の変化を指摘しました。
「YouTube はコネクテッドテレビと SNS の間の最適な場所に位置しているように思います。ユーザーにとって YouTube は、SNS よりも自由に管理できて検索しやすい場所ですが、そこにあるコンテンツは新鮮で、テレビほど厳密にフォーマットの制約を受けません。こうした強みを活かせれば、企業は視聴者に対して他では得られない独自の視点を提供できるはずです」(ホークス)
ホリデーシーズンの買い物動向 —— より早く、計画的になった生活者にどう対応するか
英語版の元記事:Holiday Shopping Insights: Connect early with deliberate shoppers
著者:リチャード・マンソー(Senior Director of Retail & Merchant Marketing at Google)
11 月末からクリスマスにかけてのホリデーシーズンは、米国における重要な商戦期です。
しかし人々は、驚くほど早い段階からホリデーシーズンに向けて動き出しています。調査によると、早い人では 5 月から買い物を計画し始め、YouTube クリエイターによるレビューなどに注目していることがわかりました。買い物のインスピレーションを得たり、プレゼントを探したり目的で視聴する「Shop with me」動画の需要も伸びており、2022 年、タイトルに「Shop with me」を含んだ動画は前年から 35% 以上増えました。
29% の人は、ホリデーシーズンの買い物を 10 月末までに終えており(*3)、企業としては早めの対応が求められます。
さらに人々は、以前よりも買い物に対して計画的になっています。プレゼントを選ぶ際の検討期間が延びていますが、背景には、情報探索や購入に利用できるサービスやチャネルが広がったことが影響していると考えられます。
こうした動向を捉える方法の 1 つが、Google AI を活用した P-MAXキャンペーンです。 P-MAX キャンペーンでは、1 つのキャンペーンで、YouTube や検索、Discover、マップ、Gmail など広告展開が可能な Google サービス全体へリーチを広げられます。幅広いタッチポイントを捉えつつ、クリエイティブや入札、チャネルごとの予算配分を最適化できるのです。
持続可能性を Bayer や Uber らはどう訴求したか、クリエイティブや配信設計の工夫
英語版の元記事:To boost brand sustainability stories, marketers multiply reach with AI
著者:クレア・ケリー(Head of Creative Partnerships, U.S. Creative Works at Google)
地球環境の変化を受けて、マーケターにとっても、サステナビリティ(持続可能性)への自社の取り���みを理解してもらうことは喫緊の課題になっています。
こうした流れを受けて Google の Creative Works チームでは、4 社に対して、持続可能性に関するメッセージを伝える YouTube 広告を制作してもらいました。広告配信後に Google のブランドリフト調査で確認すると、いずれのキャンペーンも、広告想起や好意度、認知度のリフトが見られました。
たとえば製薬会社の Bayer は、花粉の飛散量が増えたことでアレルギーに苦しんでいる人を救うプロジェクトについての YouTube 広告(英語)を制作しました。Google AI を用いた動画リーチ キャンペーンを採用し、視聴者がいつ、どこで、どのように視聴しているかに合わせて配信を最適化して成果につなげています。
また Unilever は、東南アジアにおける熱帯雨林の保護と再生を目指した取り組みを訴求(英語)。認知獲得に焦点を当てていたため、最初の 5 秒以内にフックを作ることを意識し、視覚的な印象を引き立てるためにあえてシンプルな楽曲を使用しました。
配車サービスを提供する Uber は、9 カ国で働く 55 人のドライバーを描きました(英語)。制作にあたっては炭素の削減を目指した「Ad Net Zero」に準拠して、すべての映像をリモートで撮影。使用した車はすべて電気自動車にしました。こうした取り組みが、6 万 3,000 人以上のドライバーが電気自動車に切り替えたという同社のメッセージへの信頼性をさらに高めたのです。
化粧品などを扱う仏の Sephora は、使い終わった製品容器の廃棄を減らすための回収プログラムについて紹介しました(英語)。YouTube 上で人気のあるクリエイターからヒントを得て、遠近法を駆使したり、視聴者に語りかけたりといった工夫を凝らすことで、親しみやすい動画に仕上げました。
プライバシーへの取り組みをアドバンテージにするには? 4 つの実践テクニック
英語版の元記事:4 practices marketing leaders follow to make privacy a competitive advantage
著者:タニーシャ・ゴードン(Principal, Data & Digital Trust Leader at Deloitte & Touche LLP)
およそ 30 年前に登場した Cookie の仕組みは、デジタル広告の効果を測る手段として長く使われてきました。しかし人々の期待にそぐわない使われ方も増え、業界は生活者の信頼を損ねる結果となりました。
サードパーティ Cookie を制限する方向へと進んでいる今、プライバシーへの前向きなアプローチが大切で、ひいてはそれが企業の競争優位性にもつながります。そのためにマーケターが考えるべきポイントとして、会計事務所 Deloitte & Touche のタニーシャ・ゴードン氏(Principal, Data & Digital Trust Leader)は次の 4つを示しました。
1:データの取り扱いについて、明確で一貫した原則を設定する
調査によると、人々が企業に対してデータを提供することに消極的になった一方で、広告に対してはより自分と関連のあるものを期待しています(*4)。対価が明確なら、データの提供にも前向きだということです。お互いが信頼関係を築き、恩恵を受けられるように、データの透明性を確保すること、ユーザー自身が情報をコントロールできること、といった基本的な原則を設計しましょう。
2:顧客とのつながりを深めるためのプロセスに投資する
顧客との関係性の築き方も重要です。データの提供に関する同意や、趣味嗜好のデータをユーザー自身で管理できるような仕組みの構築に、優先的に投資することが必要です。
3:社内外の関係者全員でプライバシーの価値を共有する
プライバシーへの取り組みは、ある 1 つのチームの責任ではなく、マーケティングや IT、データに関する部署や代理店など、社内外問わずさまざまな関係者との協力が不可欠です。社内の例でいえば、プライバシー保護のために新たな技術やシステムを導入する場合、最高情報責任者(CIO)と連携して既存ツールとの効果的な統合を模索する必要があります。
4:サードパーティ Cookie に代わる技術のテストをサポートする
マーケティングの責任者はチームに対して、AI や機械学習のような技術についても実験を促し、権限を与えることが大切です。こうした新たな取り組みによって、データが少ない中でも新たな顧客と出会えるようになります。
クロスメディアでの効果測定のポイント
英語版の元記事:A measurement formula for modern brand marketers
著者:アダム・スチュワート(VP of Sales at Google)
急速に変化する生活者の状況に対応するためにマーケターの多くは頭を悩ませています。マーケターの半数が「利用可能なデータや効果測定、分析ソリューションの数に圧倒されている」「ソリューションを使いこなしてビジネス成果につなげる自信が低下している」という調査結果もあります(*5)。
そこで鍵になるのが、クロスメディアでマーケティングを最適化するための効果測定です。プライバシー保護を重視しながら、クロスメディアでのマーケティングを成功させるための 3 ステップを解説します。
1:適切なシグナルを把握する
さまざまな広告ソリューションがあふれる中で、重要なのはビジネス目標に合った顧客のデータを捉えることです。サードパーティ Cookie の取得が難しくなった現在では、Google AI がこれを代替することが可能です。
2:チャネルの価値を決める
次に、投資利益率や将来的な売り上げへの貢献といった観点から、マーケティングチャネルごとの価値を判断することが重要です。マーケティング施策の有無でデータを比較し、その施策の貢献度を明らかにできる「マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)」の活用も有効でしょう。
3:テストを通じて結果を最適化する
最後が、 継続的なテストを通じて結果を最適化すること。テストを行ったブランドとそうでないブランドには明確な差が出ています。2020 年の調査によると、ある年に 15 回のテストを実施した広告主では、テストをしなかった場合と比べて、年間の広告効果が約 30% 向上したとの結果も出ています(*6)。
以上、2023 年に US 版 Think with Google でよく読まれた記事 5 選でした。
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