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WASP-76b

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
WASP-76b
星座 うお座[1]
分類 太陽系外惑星
ホット・ジュピター
発見
発見年 2013年[2]
発見者 スーパーWASP[2]
発見方法 トランジット法[2]
位置
元期:J2000.0[3]
赤経 (RA, α)  01h 46m 31.8576707085s[3]
赤緯 (Dec, δ) +02° 42′ 02.033178181″[3]
固有運動 (μ) 赤経: 45.398 ミリ秒/[3]
赤緯: -40.819 ミリ秒/年[3]
年周視差 (π) 5.1204 ± 0.1579ミリ秒[4]
(誤差3.1%)
距離 640 ± 20 光年[注 1]
(195 ± 6 パーセク[注 1]
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 0.0330 ± 0.0002 au[5]
(4,936,800 ± 29,920 km
離心率 (e) 0[6][5]
公転周期 (P) 1.80988198+0.00000064
−0.00000056
[6]
(43時間26分13.8秒)
軌道傾斜角 (i) 89.623+0.005
−0.034
°[5]
通過時刻 BJD 58080.626165+0.000418
−0.000367
[5]
準振幅 (K) 116.02+1.29
−1.35
m/s[5]
WASP-76の惑星
衛星の数 1?
物理的性質
直径 265,092 km
半径 1.854+0.077
−0.076
RJ[5]
質量 0.894+0.014
−0.013
MJ[5]
平均密度 0.17 ± 0.02 g/cm3[5]
表面重力 6.4 ± 0.5 m/s2[5]
(0.653 ± 0.051 G
表面温度 2,228 ± 122 K[5]
2,693 ± 56 K(昼側)[5]
年齢 18.16 ± 2.74 億年[5]
大気の性質
大気圧 不明
ナトリウム[2] 割合不明
[2] 割合不明
他のカタログでの名称
BD+01 316 b
GSC 00032-00111 b
SAO 110122 b
TYC 32-111-1 b
2MASS J01463185+0242019 b
Template (ノート 解説) ■Project

WASP-76bは、うお座の方向に約640光年離れた位置にある恒星WASP-76英語版公転している太陽系外惑星である。

発見

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WASP-76bは、2013年に太陽系外惑星探索プロジェクトのスーパーWASP(Super WASP)によるトランジット法での観測で発見され、WASP-82bWASP-90bという別の2つの惑星と���にその発見が公表された[2][6]。発見論文がarXivで初めて公開されたのは2013年だが、アメリカ航空宇宙局(NASA)のサイトでは、発見論文がアストロノミー・アンド・アストロフィジックスに掲載された2016年を発見年としている[7][8]

特徴

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大きさの比較
木星 WASP-76b
木星 Exoplanet

WASP-76bは主星から約500万 kmしか離れていない軌道をわずか1.8日で公転しているホット・ジュピターで、質量木星の約9割ほどだが、半径は約1.85倍にまで膨張している[1][5]アルベドを考慮しないときの平衡温度は1,955 (2,228 K)、主星に面した昼側の温度は2,420 ℃(2,693 K)に達すると推定されている[5]。主星からの強い放射によって大気が膨張することで質量の割に半径が大きくなっているため[9]密度太陽系の惑星で最も低密度である土星(0.70 g/cm3)の約4分の1にあたる0.17 g/cm3しかない[5]。主星に対して常に同じ面を向けて公転する潮汐固定の状態にあると考えられている[1][9]

大気と鉄の雨

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「鉄の雨」が降ると考えられているWASP-76bの大気圏の想像図

2019年ラ・シヤ天文台に搭載されている高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)による観測でWASP-76bの大気にナトリウムが含まれていることが判明した[2][10]

2020年には、超大型望遠鏡VLTによる観測でWASP-76bの昼側の大気から大量の蒸気が検出されたことが、ジュネーブ大学の研究チームによって発表された[1][5]。また、この鉄蒸気はWASP-76bの昼夜の境界のうち、「夕方」側にあたる境界でのみ検出されている。WASP-76bでは、潮汐固定により昼側と夜側の温度差が1,000 ℃以上あることで昼側から夜側へ18,000 km/h(5 km/s)という猛烈なが発生している[9]。この風により、高温の昼側にある鉄蒸気が「夕方」の境界を超えて低温の夜側に移動され、そこで凝縮して「雨」となって降ることで、もう片方の「朝」側にあたる境界では鉄蒸気が検出されなかったとするシナリオが最も可能性が高いとされている[1][5][9]。研究チームを率いたDavid Ehrenreichは、雨として降った鉄は大気循環を介して昼側の面で再び鉄蒸気となり、WASP-76bではこのような「鉄循環」が永続されているだろうとも述べている[9]

衛星の可能性 

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エクソ・イオであるWASP-76b Iが存在する可能性が示されている[11]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算

出典

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  1. ^ a b c d e 松村武宏 (2020年3月11日). “太陽系外惑星WASP-76bでは、明けない夜の空から鉄の雨が降る”. sorae.info. 2020年3月16日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Jean Schneider. “WASP-76 b”. The Extrasolar Planet Encyclopaedia. 2020年3月16日閲覧。
  3. ^ a b c d e Results for WASP-76b”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2020年3月16日閲覧。
  4. ^ Brown, A. G. A. et al. (2018). “Gaia Data Release 2: Summary of the contents and survey properties”. Astronomy and Astrophysics 616 (A1): 22. arXiv:1804.09365. Bibcode2018A&A...616A...1G. doi:10.1051/0004-6361/201833051.  VizieR catalog entry
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Ehrenreich, David; Lovis, Christophe; Allart, Romain 'et al. (2020). “Nightside condensation of iron in an ultra-hot giant exoplanet”. Nature: 33. arXiv:2003.05528. Bibcode2020arXiv200305528E. doi:10.1038/s41586-020-2107-1. 
  6. ^ a b c West, R. G.; Hellier, C.; Almenara, J. -M. (2016). “Three irradiated and bloated hot Jupiters: WASP-76b, WASP-82b & WASP-90b”. Astronomy and Astrophysics 585 (A126): 7. arXiv:1310.5607. Bibcode2016A&A...585A.126W. doi:10.1051/0004-6361/201527276. 
  7. ^ WASP-76 b”. Exoplanet Exploration. NASA. 2020年3月16日閲覧。
  8. ^ CONFIRMED PLANET OVERVIEW PAGE: WASP-76 b”. NASA Exoplanet Archive. 2020年3月16日閲覧。
  9. ^ a b c d e Mike Wall (2020年3月11日). “Molten iron rain falls through the skies of scorching-hot exoplanet”. SPace.com. 2020年3月16日閲覧。
  10. ^ Seidel, J. V.; Ehrenreich, D.; Wyttenbach, A. et al. (2019). “Hot Exoplanet Atmospheres Resolved with Transit Spectroscopy (HEARTS). II. A broadened sodium feature on the ultra-hot giant WASP-76b”. Astronomy and Astrophysics 623 (A166): 10. arXiv:1902.00001. Bibcode2019A&A...623A.166S. doi:10.1051/0004-6361/201834776. 
  11. ^ Sodium and Potassium Signatures of Volcanic Satellites Orbiting Close-in Gas Giant Exoplanets”. THE ASTROPHYSICAL JOURNAL (2019年11月12日). 2020年12月11日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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